70年代後半から80年代にかけて活動したポストパンクバンド「絶対零度」の元メンバー、中川一郎氏のソロプロジェクト。
「ガセネタ」のドラマー・佐藤隆史氏が経営していたライブハウス吉祥寺マイナーで行われていた「剰余価値分解工場」というイベントなどにも出演していた絶対零度は、当時のアンダーグラウンドシーンで名を知られた存在でした。しかしその音楽性には、前衛的要素を持ちつつもあくまでウタに力のるいわゆる歌物、フォークや日本語ロックなどが源流にあります。
現在の中川さんの音楽の特徴として、その大枠はいわゆるアンビエントに括ることのできるものだと思うのですが、主軸にはあくまでウタがあります。
絶対零度の解散後、長く音楽活動を行わず主にリスナーとして過ごしていた中川さんが、当時追いかけていた早川義夫氏のライブ後「『毎回、ライブに来てくださるのは嬉しいし、おいかけてくれるのも嬉しいのだけれど。あなたに歌いたいことがあるならば、それをぼくに投影して、ぼくを追いかけて紛らわすのではなく、あなたはあなたの歌を歌ってくださいな。』というようなテレパシーの声を聴いたような気がした」ことが現在の活動に至るきっかけだったそうですが、元々歌物をやっていた、歌を大切にしていたそれだからこそウタに絶望してしまう。そういった動機からアンビエントミュージックやノイズなど無調性音楽に接近する音楽家もいますが、中川さんの場合は納得のできるメンバーと入念な練習を重ねてバンドをやるよりも、ギター一本にエフェクターを繋いだ方が自由に歌を表現できるのではないかという実際的な理由、ウタに拘った結果、としてのアンビエントだったということです。
浮遊感の中に舞うしかし確かに吐き出さなければ遣る瀬なくなってしまう歌。言葉。それを聞きに来てください。
及川耕碩(Vo,Sax)
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