DJ手塚
7月14日(土)に高円寺DOM studioで行われる第一回てろてろ自主企画 「ウタ、ライブ」の出演者を、てろてろの各メンバーが紹介していきます。第十七回はDJ手塚です。
たった一回で終わってしまった、「ハトックシュウゼン事件」という、音楽と演劇と朗読などが一体となった不思議なイベントがありました。
隙間なく……というよりもすべてが有機的に絡み合って隙という感覚を忘れてしまうような、全員違うことをやっているはずのバラバラの出演者が、一つになってステージを作り上げていました。舞台の上で、エフェクターつけた包丁でなめろうを作ったりしてたから、料理の要素もあったかもしれない(今書いてもなんだかよくわからないな)。
ハトックシュウゼン事件の主催である手塚君とは、それ以前から知り合いだったのですが、お互いいつどこで出会ったのかよく覚えていません。お互い趣味がまったく違ったので、インターネット経由でないのは確かです(当時彼に「最近、谷川俊太郎の詩の良さに気づいた」と言ったら鼻で笑われ、私は私で彼が得意なポストモダンやらニューアカやらに理解がなかった)。お互いなにがなんだかわからんまま数年間、つかず離れず時々遊んでいたのですが、まさかこんな長い付き合いになり、ライブの撮影までしてもらうようになるとは思わなかった。
ある時ふと、ハトックシュウゼン事件が、ある時代のフリージャズのイベントを模した、現代風にアップデートしたものだったのでは?と気づきました。
彼が、日本フリージャズ界黎明期を支えたプロデューサーであり、評論家でもある故・副島輝人さんの弟子筋に当たるということを知ったからです。 副島さんは、肉体労働しながら、海のものとも山のものともしれぬ前衛ミュージシャンの表現の場を作っていた人でした。ハトックシュウゼン事件は、そういった表現の幅への懐の深さ、みたいなものを副島さんから受け継いでいたように思うのです。
中上健次、保坂和志、山下澄人、柴崎友香、セシル・テイラー、デレク・ベイリー、スティーブ・レイシー、ナウ・ミュージック・アンサンブル……純文学といったら町田康、フリージャズといったら阿部薫程度しか知らなかった私に、手塚君が教えてくれたものです。私は彼によく天皇とか関東周辺の被差別部落の話とかしてます。
お互いに全く知らない、興味のない、むしろ反発するような趣味を、吸収しあって変容していく。そういうことのできた、私にとって、コミュニケーションへの絶望にほんの少しの希望を残してくれた男なので、今回は屋上でDJをやってもらうことにしました。
きっと皆様にもなにか、今までにない、素敵な曲と出会わせてくれるのではないでしょうか。
「INSPIRATION & POWER 14 Free Jazz Festival」という、副島さん主催のフリージャズのイベントを音源化したアルバムがあるので、こちらもぜひ手にとってみてください。
https://www.amazon.co.jp/Inspiration-Power-Free-Jazz-Festival/dp/B003JH596Q
(評者 Vo,Sax:及川耕碩)
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