2019年3月7日木曜日

ウタ、ライブ2出演者紹介その5「ダンカンバカヤロー!」

今回の企画に集まってくれた人たちは全員、私の考える「ウタ」を歌ってくれる(たとえインストであっても)人たちなのですが、中でもダンカンバカヤロー!は最もシンプルな形でそれを届けてくれるバンドだと思います。

「ウタ」の面白いところは、普段の言葉遣いと違う音使いで言葉を使って、裏切るところです。つまりメロディがあればウタかと言えばそうではないですし、逆に言葉があっても何かを裏切り視点をズラした上で納得させなければウタとして陳腐になってしまう。転じて、メロディに限らず拍子、リズム、構成、魅せ方、選ぶ言葉、が予定調和でない、思ってもいないところに連れて行ってくれるのが「ウタ」の本質なのではないか。そう思います。

ところで、行きたかったけれど行けなかったライブに、小仏のドラマー奥山君が主催した"korekara doshiyo"というタイトルの企画がありました。
そのころ私は完全な無職で、すると周りにも同じような友達ばかりができて、当時は石を投げれば無職に当たる、と言った有様でした。
もちろん、一口に無職と言っても色んな無職がいます。働きたくないだけの無職、働けない無職、働く前の無職(学生)、働かないことで何かをなしたい無職、無力感、現実逃避、世間への反逆、周りに流されて……理由は多種多様でしたが、頭の中は多分みな同じだったような気がします。

「これから、どうしよう」

ダンカンバカヤロー!のCDを買って一番最初に聴いたのが”これからどうしよう”という曲でした。「あ、あの企画と同じタイトルだ」……と、タイトルに惹かれて聴いてみたら、まず単純に曲がいい。シンプルで短いイントロに、同じコード進行のサビから始まる「だけど、だけど、だけど、これからどうしよう」というキャッチーな言葉のリフレイン。
さて、しかし、何が「だけど」なのだろう。そう思って聴いていたら、終盤の歌詞で、とある映画が一番好きだ、と歌われるのです。そしてまたサビ

「……だけど、これからどうしよう」

好きな音楽や、映画や、本や、何がしかをあのころ私の周りに居た人たちはみんな持っていました。興味のない人間からしたら「だからなんなんだ」というようなものを。何者でもないのに、大事なものだけは抱えきれないくらいに持っていました。
"これからどうしよう"は、音が、言葉が、予想もしなかったところに、他人が簡単に踏み入れられない過去にまで連れていってくれて、だからこの曲が、本気で、この世のすべての音楽の中で、私は10本指に入るくらい好きなのです。
そしてこの曲を作ったダンカンバカヤロー!というバンドは、ずうっと予定調和を乱し続けている( 例えば、"お風呂大好き100連発"という、「風呂がいかに素晴らしいかだけをただただ歌い上げる曲」1曲をひたすら演奏し、体力の果てるまでそれを繰り返すワンマンライブとか。呆れ果てて感動した)、誰よりもちゃんとしたウタを歌うパンクバンドなのです。
(評者 Vo,Sax:及川耕碩)




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