幾度かのメンバーチェンジを経て、現編成。その複雑かつ奇妙な音楽性は、プログレッシブハードコアとも、パワープログレとも呼ばれる。
難解なリフをいくつもいくつも、まるで己の業そのもののように積み重ねてゆく楽曲。Vo関口マーフィーの優れた身体能力によって演じられる一見コミカルだが攻撃性の強いパフォーマンス。インパクトのある単語を速射砲のように放ち続け、聞き手の襟を掴んで離そうとしないような歌詞。それらを下支えする研ぎ澄まされたバンドサウンド。
驚異のライブ本数によって洗練され完成されたステージングは、今まさにバンドとして円熟の境地に達していると言って良いものであるにも関わらず、どこか荒削りにハードコアに見えるのは、この過剰さ。そして、ハードコアパンクという音楽が持つ悲しさ苦しさをこのバンドが体現しているからかもしれません。
「どこにもいけない なににもなれない ここから出られない おまえのよう 底止して」(底止)
閉塞感に満ち家族に生活に毎日に絶望しながら、笑うことしか許されない世界。
その苦しい笑顔と同じように引きつった複雑なリズムは、言葉は、ふっと駅のホームから飛び込むことで行けるかもしれない「りんご園」へと心惹かれてしまう疲れた者たちの魂をすすぎ、苦しさも辛さも怒りもそれらを生み出す事を決してやめようとしない不条理なこの世界そのものすらも肯定してしまう。それはとても悲しい肯定、明るい悲しさで、ハードコアという音楽が激しくかつ悲しい音楽だとするならば、3コードでもなければ革ジャンも着ていないにも関わらず、間違いなく彼らが「パンク」の「ハードコア」のバンドであると、誰もが感じることができると思います。
(及川耕碩・てろてろ)
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